諸事情によりしばらくお休みです
大人の事情でしばらくお休みします。
コメント等への返信も遅くなりがちになると思いますが、どうかご了承を。
大人の事情でしばらくお休みします。
コメント等への返信も遅くなりがちになると思いますが、どうかご了承を。
量子化学計算を行う際、当然系が大きくなるとそれだけ計算時間がかかるわけですが、系が倍になれば計算時間も倍かというと、そうはいきません。系のサイズN(通常基底関数の数や単位構造の数をとります)に対して、理論上の計算時間はHFは4乗、MP2は5乗、CCSD(T)は7乗に比例し(これをスケーリングといいます)、計算対象が大きくなると急激に計算時間が延びることが容易に理解できます。
このスケーリングを小さくし、系のサイズの1乗に比例する=リニアスケーリングに到達することが現代計算化学の目標とされているわけですが、そう簡単には到達しません。今使えるプログラムの各種理論モデルはどれくらいのスケーリングなのか、GAMESS(US)・PC GAMESS/Firefly・ORCA(とおまけでPRIRODA)の比較をしてみました。
CCL (computational chemistry list)で無償公開されているMOPAC 6のちょっと強化版「MOPAC 6.06」をここに公開します。
mopac606_exe.zip
(Windows用実行ファイル(Cygwin/g77でコンパイル), 重原子80/水素原子100)
mopac606_src_diff.zip
(改変・追加した差分ソースコード)
linux_runscript.zip
(linux用入出力補助シェルスクリプト)
Yale大学のJorgensenらによるPDDG (Pairwise Distance Directed Gaussian)法追加版MOPAC 6を基に、同グループから発表された追加のPDDG/PM3パラメータを加え、いくつかの機能追加・バグフィックスを施したのがMOPAC 6.06です。発案およびPDDG/PM3パラメータ追加は佐々木(pc-chem.info)が、.mgf出力やいくつかのバグ修正等は千田(tencube)が実施しました。
GAMESSを使ってNMRの化学シフトを計算することができますが(記事)、この計算にはかなりの時間とメモリ量を要し、量子化学計算で算出する利点の数々もこのリソース消費との比較で霞んでしまうことがあります。
商用プログラムでは化学シフトの高速計算を実現しているものもありますが、無償で利用可能なプログラムの中にも高速で計算できるものがあります。
ORCA(http://www.thch.uni-bonn.de/tc/orca/)は、ドイツ・ボン大学のFrank Neeseらによって開発・メンテナンスが行われているプログラムですが、このプログラムにはIGLO法によるNMR遮蔽定数計算が実装されています(しかもLinux版では並列化されています)。ORCAのIGLO法によるNMR計算では、GAMESSのGIAO法による計算に比べて圧倒的に計算時間が短く、しかもメモリ消費量も格段に少なくなっています。ppm換算で小数点以下1桁までしか出力されないため、1H-NMRの計算には不向きですが、13C-NMRの計算には十分活用可能です。
果たしてその精度はどれくらいなのか、実際にいくつかの有機分子で計算を行ってみました。
高校の化学で習う有機化合物の分類に「芳香族化合物」があります。由来を知らないと何か変なネーミングですが、変なのはそれだけではなく、むしろその化学的性質です。不飽和結合(=π結合)を有するにも関わらず付加反応を受けにくく、むしろ置換反応を起こす。普通の不飽和化合物としての予測よりも燃焼熱が小さい。ベンゼンやシクロペンタジエニルアニオンのC-C結合が全て同じ長さ。こういった芳香族化合物に特徴的な性質を「芳香族性」といいます。
計算化学によって芳香族性を調べることができますが、ここでは
・芳香族性による安定化を実験的に見積もる方法である水素化熱の比較
・異性化反応モデルによる芳香族性の見積もり
・磁気的性質によって芳香族性・反芳香族性を調べる
の3つについて計算例をお示しします。

(C) 2002-2006 s2k (W. Sasaki) All Rights Reserved.