Facioを使ったモデリング例
Fig.1 Vildagliptin※Vildagliptin(ビルダグリプチン:Fig.1)は、プロリンから誘導されるアミノニトリルとアダマンタン骨格が特徴的なDPPIV(DiPeptidylPeptidase IV)阻害薬で、インスリン分泌を促進するホルモンの分解を抑制することによりインスリン分泌を促進し、血糖値を低下させる作用を有します。
アミノニトリル骨格の構築
Facioをインストールすると、同時に多様な分子のPDBファイルが展開されます。PDBフォルダの中に「Cycloalkanes」のフォルダがありますので、その中のCyclopentane.pdbを利用したいと思います。[File>Load New PDB File]を選択し、Cyclopentane.pdbを開きます(Fig.2)。これに置換基を追加していくわけですが、Editメニューから種々の操作をこなすことはできるものの、毎回メニューを開くのは面倒ですので、[Miscellaneous>Show Edit Tool Box]を選択し、分子編集ボックスを表示させるのが便利です。ボックスの[C(sp)H]を選択し、水素の一つをクリックして置換します(Fig.3)。次にボックス[Change Atom]を選択し、先ほど置換したC-Hの水素をクリックすると、元素変更ボックスが表示されます。[N]を選択し、[Apply]ボタンをクリックすることで窒素に変更されます(Fig.4)。同じように環内の炭素を一つ窒素に変更し、編集ボックスの[Delete Atom]で窒素上の水素原子を一つ削除します(Fig.5)。これで、アミノニトリル骨格が完成しました。アダマンチル基の導入
アミノ基上の水素を[Formyl]で置換してアミドにし、[CH3][NH2]と順に置換してFig.6のようにグリシンアミドにします。図ではアミド結合がねじれていますので、これを補正するために[Rotate Group]を選択、回転させたい結合を形成している2原子をクリックします。角度/結合長調整パネルが表示されますので、スライダーを動かして適当な二面角に調整します(Fig.7)。アダマンタン骨格もこれらと同じように導入できれば楽ですが、こんなマニアックな置換基は編集ボックスには当然ありません。ただしPDBファイルはありますので、これを連結することができます。[File>Load and Append Another PDB File]を選択し、PDBフォルダ内にあるAdamantane.pdbファイルを開きます。すると、Fig.8のような状態になります。一瞬ギョッとしますが、左に表示された位置/角度調整ボックスでアダマンタンの位置を調整することができます。とりあえず水平方向に移動させて重ならないようにすればよいでしょう(Fig.9)。(分子が画面からはみ出したりしますが、随時[Utilities>Move Whole Molecule to Center]で全体が収まるようにできます)
アミノ基とアダマンタンの1-位を結合させたいわけですが、ここで[Edit>Aligh Four Atoms]を選択し、アミノ基窒素,アミノ基水素,アダマンタン1-位水素,アダマンタン1-位炭素を順に選択すると、選択した4原子が一直線に並びます(Fig.10)。あとは2つの水素原子を削除し、分子編集ボックスの[Make Bond]で結合を形成、[Move Gr. along..]で適当な距離に調整します(Fig.11)。最後に[OH]で置換して、Vildagliptinがひとまず完成します(Fig.12, vildagliptin.pdbとして保存)。
MOPACによる構造最適化
上記で構築した構造は、まだ最適化はされていません。FacioはMOPACによる計算を行うことができますので、MOPAC 7.2 betaで構造最適化を行いたいと思います。[Calculations>MOPAC]を選択、MOPACの入力作成ボックスを開きます(Fig.13)。キーワードを「PM6 EF PRECISE MMOK XYZ」とし、画面下の[Save As MOPAC Input]で適当な名前をつけて保存します(vildagliptin.dat)。[Execute Calculation]で計算を実行します。終了すると、自動的に最適化された構造が読み込まれて表示されます(Fig.14)。
他にも細かいテクニックはいくつもありますが、ひとまずここで紹介した操作ができれば、ほとんどの分子のモデリングはできると思います。