MOPACの概要

半経験的分子軌道法として最も有名且つ最も歴史あるプログラムが、ここで紹介するMOPACです。MOPACは1983年にver.1が公開されて以来、二年に一度ぐらいの割合でバージョンアップを重ね、ver.5で初めてPM3ハミルトニアンが導入、ver.6でPM3ハミルトニアンが改良され、このver.5~6の辺りで急激に広まりました(たしか)。現在、無償で公開されているのはver.7(MOPAC93のβ版?)までで、それ以上のバージョン(93以降)は有償となっています。当サイトでは、現在無償で入手可能なMOPACの中で最も入手が容易で、信頼性のあるver.6を中心にデータを紹介しています。また、一部に比較で最新一歩手前のMOPAC2002ver.1によるデータも紹介しています。

MOPACの入力ファイル

MOPACの入力は、3つの部分――キーワード,分子構造データ,追加データ――で構成されています。入力ファイルはごく普通のテキストファイルで、Windows標準のメモ帳で編集することができます。

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MOPACのキーワード

MOPACのキーワードは膨大な数に上り、とても全てを紹介することはできません(そもそも筆者が全てのキーワードを使いこなしてはいません)。ここでは、当サイトで使用頻度の高いキーワードに絞って紹介します。具体的な使い方は実践の項で。

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MOPACにおける分子構造の表記法

分子軌道計算の入力には、当然分子構造の入力が必要です。分子構造の記述はいろいろと考案 され、現在でもいくつかのフォーマットが平行して使われています。代表的なものを挙げると、Cartesian座標(直交座標)MOPAC z-matrixGaussian z-matrixの3つが有名です。MOPACで主に用いるのはその名前通りMOPAC z-matrix(以下単にz-matrixと表記)です。

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GAMESSの概要

GAMESS(US)は、Iowa州立大のGordon,Moscow州立大のGranovsky,大阪府立大の小関先生らによって開発及び配布が行われている、無償提供の非経験的分子軌道法/密度汎関数理論計算プログラムです。無償で提供されているにも関わらず、詳細なマニュアルが配布され、またありとあらゆる OS,プラットフォームへ移植されています(Windows,Mac,Unix,Linux,DOS,OS/2,Solaris...)。

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GAMESSの入力ファイル

GAMESSの入力ファイルは、その内容の全てが「$XXXXX~$END」というブロック(グループという)に分けて記述されています。各グループ内に「keyword=property」の形で具体的な計算指示が格納されます。プロパティの多くにはデフォルト値が設定されていて入力が不要なケースも多いですが、ユーザー側で正確に指定する必要のある項目も多数存在します。

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GAMESSのキーワード

GAMESSのキーワードはMOPAC以上に膨大な数に上り、とても全てを紹介することはできません (当然筆者は全てのキーワードを知っているわけではありません)。ここでは、当サイトで使用頻度の高いキーワードに絞り、その意味と利用方法を説明していきたいと思います。

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Winmostarの概要

Winmostarは、千田範夫氏によって個人で開発された、フリーの計算化学支援ソフトです。Windows上で分子軌道計算を行う際、その入力作成や出力可視化にかかる時間を大幅に削減することができます。複数の計算プログラム(MOPAC/MOS-F, GAMESS, Gaussian)に対応しており、Winmostar一つでこれらのプログラムを利用した計算が可能になっています。
プログラムの動作が非常に軽快で、グラフィック性能の高くないPC上でも動かすことができます。これは、分子表示を擬似3D(2D)表示にしているためで、高品質のグラフィックを得たいときは、様々な外部ツールと連携をとることにより質の高い3D分子モデル/画像を作成することが出来ます。具体的には、VRML View, Cosmo player, mercury, chemscape chime, Povrayに直接分子の立体構造データを引き渡し、シームレスに高精細なグラフィックに変換することが可能です。
その他にも、X線結晶解析データの標準であるCIFファイルの読み込み、分子力学による簡易構造最適化機能、マウスによるグラフィカルな分子の編集だけでなくz-matrixと分子を見比べながらの直接編集が可能、ソフト自体の動作が軽快など、従来の計算フロントエンドツールとは一線を画したソフトウェアです。

Moldaの概要

MOLDAは、純国産の計算用フロントエンドとしては最も歴史が古く、80年代前半から開発が続いています。MOPAC,GAMESSの他にもMM2,Tinker(分子力学)やGaussian にも対応し、計算化学のHub的な役割を果たしています。昨年、バイオインフォマティクスを強く志向した「MOLDA Qulis」を開発、扱える原子数が大幅に強化され、タンパク質の自由度の高いモデリングが可能になりました。MOPACをタンパク質計算用に進化させた MOZYME(富士通)と組み合わせても良さそうです。

Moldaは対応している計算プログラムの多さに加えて、振動計算の可視化を行うことができ、また大量のテンプレートが同梱されているので、一般的な有機分子ならばその中から近いものを選んで、少し修飾するだけで目的の分子が構築できます。 VRMLへの出力もサポートしています。そして、各種計算プログラムを、Moldaとのデータのやりとりを通して連携させることが可能であることが、最大のメリットといえます。

Molekelの概要

Molekelは、非常に精細で鮮やかなグラフィックが特徴の計算データ可視化ツールです。可視化できるプロパティは、最適化構造・分子軌道・双極子モーメント・静電ポテンシャル・振動・最適化過程の構造変化……と、ここに書ききれないほどです。得られたグラフィックは種々のフォーマットで保存できます。

非常に多機能なすばらしいツールですが、若干不安定で、PCのパワーを食うような印象があります。特にWindows XPを使っている場合に不安定であるように思います。あまり他のソフトと併用できません。また、機能が多すぎて戸惑ってしまう感もあります。私自身全ての機能を使いこなしてはいません(笑)。しかし、右のスクリーンショットを見て分かるとおり、可視化性能はすばらしいです。

基底関数の詳細な設定

GAMESSには、基本的な基底関数はプログラムに含まれていて、特定のキーワードを使って呼び出して使います。$BASISグループが、基底関数に関する指定を行うセクションになります。既に「キーワードの説明」で、よく使うものについて説明していますが、ここではさらに詳しい入力について説明を加えます。

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Facioの概要

Facioは、GAMESSとGaussian,MOPAC,UTChemなどの分子軌道計算プログラム用プリポスト/可視化プログラムで、OpenGLを使った精細なグラフィックや市販プログラムに類似した操作性,z-matrixを意識しない入力作成など、計算初心者にも優しく、且つ中級者にも魅力的なプログラムです。

分子グラフィックについてはMolekelと負けず劣らず高度で、非常に精細な分子モデルを作成することが可能です。また、出力可視化についても優秀で、分子軌道はもちろん、IR/Ramanスペクトル,IRCなど多様な出力に対応しています。分子力学プログラム集Tinkerの構造最適化プログラムを利用して簡易最適化を行ったり、核酸/ペプチド自動生成プログラムを利用して核酸のモデリングを行うことも可能です。

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Facioを使ったモデリング例

facio_mod001.jpg Fig.1 Vildagliptin
Facioを使った低分子のモデリング例として、Novartis社が開発したDPPIV阻害薬(糖尿病治療薬)『Vildagliptin』の簡単な構造最適化を行いたいと思います。この例で、Facioを使った分子構築の多くの機能を理解することができると思います。

※Vildagliptin(ビルダグリプチン:Fig.1)は、プロリンから誘導されるアミノニトリルとアダマンタン骨格が特徴的なDPPIV(DiPeptidylPeptidase IV)阻害薬で、インスリン分泌を促進するホルモンの分解を抑制することによりインスリン分泌を促進し、血糖値を低下させる作用を有します。

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PC GAMESSのSMP環境における並列化

PC GAMESSはWindows環境でも簡単に並列化することができます。最近はデュアルコアCPU(人によってはクアッドコアも?)を利用している方も多いと思いますので、SMP環境に適応した簡単な並列化の方法をお示しします。

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WinGAMESSでQM/MM計算

非常に大きな分子を計算するとき、その計算時間を削減する方法としてQM/MM法が現在有力な方法の一つとなっています。大きな分子においては全ての原子が重要ではなく、多くの原子は立体的な影響のみで、電子状態が重要な寄与を果たすのは一部であるという考え方は、直感的に受け入れやすいものです。そういう場合、分子を「精密に計算する部分:高精度ab initio法やDFT」と「粗く計算する部分:低精度ab initio法や半経験法,分子力学」という風に区分して計算できれば、計算資源の節約につながります。

GaussianではONIOM法が実装されており、分子を最大3つのレイヤーに切り分け、各層に別々のモデル化学(非経験的分子軌道法および密度汎関数理論,半経験的分子軌道法,分子力学)を割り当てることができます。
一方、GAMESSではONIOM法の基となったIMOMM/SIMOMM法が実装されています。これは、分子を2つのレイヤーに切り分け、一方に量子力学計算を、もう一方に分子力学計算を割り当てます。分子力学のエンジンとしてはTINKERが使われています。ここでは、IMOMM法を使ったQM/MM計算の簡単な例を紹介します。

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MoldenをWindows上で利用するには

Moldenは等高線表示のポストスクリプトファイル(pdfに変換可能)での出力やOpenGLを使った精細な分子グラフィックの出力など、利用したい機能がいくつもあるソフトウェアですが、もともとUnix/Linux上での利用を想定して作られているので、Windows上で利用するには「Xサーバ」と呼ばれるソフトウェアが別途必要になります。Cygwinを使った方法WiredXを使った方法が紹介されていますが、ここではXmingを使った方法について紹介します。

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Counterpoise補償法によるBSSEの見積

分子間の相互作用は、計算化学が扱う主要な問題の一つです。単純に考えると、例えばAという分子とBという分子が相互作用してABという錯体を形成する場合、A,Bが単独で存在したときのエネルギーと錯体ABのエネルギーを比較して、その相互作用がどれぐらい強いかを議論するということになります。しかし、ここには思いがけない落とし穴が存在します。それが本稿で紹介するBSSE(Basis Set Superposition Error:基底関数重なり誤差)です。以下、GAMESSでのBSSEの計算方法とモデル化学による差について見てみたいと思います。

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出力されるエネルギー値の取り扱い

量子化学計算により出力されるデータの中で、必ずと言っていいほど利用されるのがエネルギー値です。その値と出力パターンは計算の方法(プログラム・計算目的・モデル化学)の違いで変わってきます。

ここでは、GAMESS(WinGAMESS/PC GAMESS)の出力ファイルのどこにエネルギーが記載され、その値はどのように処理すべきかについて、ごく簡単に述べたいと思います。

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WinGAMESSのSMP環境における並列化

PC GAMESSの並列化については以前に書きましたが、ここではWinGAMESSの簡潔な並列化について紹介します。PC GAMESSとWinGAMESSはどちらも「GAMESS」とつきますが、その中身はかなり違っていて、例えばPC GAMESSではMP3/4計算やRSURFACE計算,Cube出力の実装,そして何より計算が高速なのが特長で、WinGAMESSではCCやNEO,EFP/PCM,NMR,TinkerによるQM/MM,UMP2 GradientなどPC GAMESSより幅広い計算が可能になっています。

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