分子軌道を表示する

パソコン上で分子の計算をしようと思うきっかけの一つは、いろいろな分子の形だけでなく、その分子軌道の様子を観察したいということではないでしょうか。

最近の有機化学の教科書では、模式的な軌道図だけではなく綺麗なグラフィックで描かれた分子軌道も掲載されていることが多く、それに魅せられる方も少なからずいらっしゃると思います。筆者もそんな一人でした。

もし今、一から分子軌道の表示まで最短で行いたいならば、Winmostarの無償版を利用するのが一番スムーズではないかと思いますので、Winmostarの画面を例に、その手順を簡単にお示ししたいと思います。

分子の組み立て

pci000002あまりシンプルなものでもつまらない気がしますので、インドールを例にしたいと思います。
分子の編集は常に①対象部位選択②アクションの繰り返しです。まず、初期画面の炭素原子をクリックし、次に上部の[-C6H5]ボタン、[Rep]ボタンを順にクリックすると、ベンゼンになります。これは、炭素原子をC6H5期(フェニル基)に置換する操作です。頻出する置換基であるメチル基・ビニル基・フェニル基は独立したボタンになっており、それ以外の代表的な置換基や分子の構築に便利な部分構造はプルダウンに入っています。

 

pci000004ベンゼン環の水素を一つどれでも良いので選択し、置換基のプルダウンから[-CHCH-]を選択し[Rep]をクリックすると、ビニル基の水素が一つ無い構造に置き換わります。次に、ベンゼン環上で今置換した部位の隣の水素を選択し、今度は[-CH-]で置換します。手が足りない炭素が2つできましたが、これらを両方選択し、上部の結合形成ボタン[●-●]をクリックすることで結合ができます。

以上で骨格はできました。あとは、本来は窒素でなくてはならないところの炭素を選択し、上部の元素選択プルダウンから窒素(N)を選び、[Chng]ボタンをクリックすることで窒素に置き換わります。

pci000008このままでは形がいびつなので、上部の箒ボタン(クリーン)をクリックすると、構造が整います。この操作はあくまで簡易的な構造の歪みを除去するだけで、正しい構造を与えるものではないことに留意してください。分子軌道計算をするための入力構造としてマシなものに整える程度です(あまり変な構造で計算をすると時間が掛かったり望ましい結果が得られなかったりします)。

 

 

 

pci000009Winmostarでは、デフォルトでMOPAC6,7が同梱されており、キーワードも設定されています(画面右側)。そのまま[ファイル]で適当な名前をつけて保存し(この時ファイル形式は最初からMOPACの形式が選択されていると思います)、[計算1]→[MOP6W70 実行]をクリックすると、キーワードの指示に従った計算が行われます。

 

 

 

pci000012計算が終わるとDOSプロンプトの黒い画面が閉じ、最適化構造と双極子モーメントが表示されるとともに、計算結果をまとめたファイルも開きます。この中身は大事なのですが、ここでは閉じてしまい、[計算1]→[インポート]→[MO(mgf)]を選びます。先ほど保存した場所と同じ所にmgfという拡張子のファイルが生成していますので、これを選びます。すると、分子軌道を可視化するためのウィンドウが新たに開きます。デフォルトではHOMOが選択されていますので(Energy Plot上部にもHOMOの軌道番号が表示されています)、そのまま[2D]または[3D]ボタンをクリックします。2DならばWinmostar本体の分子表示エリアに2Dグラフィックで表示され、3Dならば別ウィンドウが立ち上がり3Dグラフィックで表示されます。

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インドールのHOMOでは3位及び5位の膨らみが大きく、求電子試薬と反応しやすいことを示唆しています。

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