Diels-Alder Reaction
Diels-Alder反応は、共役ジエンとアルケンが協奏的に付加し、シクロヘキセンを生成する反応です(今更言うまでもないのですが)。この反応は、現在有機化学者が手にしている 6員環合成反応の中で、最も優れたものです。通常Diels-Alder反応は、電子豊富なジエンと電子不足なアルケン(ジエノフィル[ジエン好き]と呼ばれる)との間で行います。
本反応は、一度に二箇所の炭素-炭素結合が形成される反応です。二つの変数を同時に動かすには、STEP/POINT計算がよく用いられますが、今回は二つの結合を等しく伸び縮みさせるために「SYMMETRY」を使ってMEP計算を行います。
SYMMETRYを使ったMEP計算
先に述べた通り、Diels-Alder反応は同時に二つの結合が形成される反応です。ですから、二つの結合を常に同じ長さで扱うため、「SYMMETRY」というキーワードを用います。その前に、まずボート形のシクロヘキセンを構築します。cis-2-Buteneを作り、末端から同じ方向にメチル基を生やし、水素を二つ取り除いて結合を作り、cleanすることで初期構造を作成できます(Fig.1)。最適化はPRECISEを入れずに行います(PRECISEを入れると半いす形のシクロヘキセンに最適化されることがあります)。最適化されたボート形シクロヘキセンを初期構造に、MEP計算の入力を作成します。キーワードは「PM3 EF SYMMETRY STEP=0.1 POINT=10」です(Fig.2)。脱離していくエチレンに相当するC7とC11のうち、C7の結合距離のみ最適化フラグを-1に設定します。そして、追加データエリアに「7 1 11」と入力します。
STEP/POINTは、初期値から何Åずつ、何回ステップさせるかで、ここでは0.1Åずつ10回=1Å結合を伸ばしていくことを示しています。SYMMETRYに付随するデータが、追加データエリアに記入した「7 1 11」で、7番原子の結合距離(1)を11番原子にも適用するという意味です。もし結合角を同じにしたいときは「7 2 11」、二面角を同じにしたいときは「7 3 11」とします。これにより、変化させるC-C結合が左右均等に動くことになります。なお、C11の最適化フラグは-1にする必要はありません。
この計算を実行すると、Winmostarの場合エラーダイアログが出ますが、気にせずOKして、arcファイルを開きます。これを見ると、2.12Åの時に最もエネルギーが高いことがわかります(Fig.3)。今度はoutファイルを開き、2.12Åの構造を探します。その部分をコピーし(Fig.4)、適当な名前で保存します。
TS計算とまとめ
MEP計算によって得られた初期構造を基に、TSの最適化を行います。ここではSYMMETRYを外し、PRECISEを入れて精密な最適化を行います(Fig.5)。得られた構造について、「PM3 FORCE LET」で振動計算を行うと、ただ一つ虚振動が見出されます(Fig.6)。Winmostarでは振動計算の結果を可視化できますので、[Import]→[Force]でoutファイルを読み込みます(Fig.7)。左側の振動数一覧から-930.1を選択し[Anim.]ボタンをクリックすると、3Dモデルで虚振動のアニメーションを見ることができます。【gifアニメーションファイル:Diels-Alder_TS.gif, 358KB】原系や生成系を最適化し、エネルギーを比較したのが下の図です。
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実測の活性化エネルギーは27.5 kcal/mol、反応熱は38.7 kcal/molです。活性化エネルギーが非常に良い一致を見せる一方で、反応熱は14 kcal/mol程度大きく見積もられています。